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急な事故やケガで働けなくなったときの生活費をどう確保すべきか

誰にでも起こりうる事故やケガ。働けなくなったとき、治療費だけでなく日々の生活費をどう工面するかは切実な問題です。収入が途絶えても、家賃や食費、子どもの教育費、住宅ローンなどの支払いは待ってくれません。

こうした状況に備えるには、公的な制度と民間の保険の両方を理解し、自分に合った方法で準備しておくことが大切です。

まず知っておきたい公的保障制度

働けなくなったときの生活を守るため、日本には公的な保障制度が用意されています。会社員や公務員、自営業者など、働き方によって利用できる制度が異なります。

会社員・公務員が使える傷病手当金

会社員や公務員の方が業務外の病気やケガで働けなくなった場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。全国健康保険協会の情報によると、この制度には以下のような特徴があります。

  • 連続3日間の待期期間後、4日目から支給対象となる
  • 支給額は標準報酬月額の約3分の2相当
  • 最長で通算1年6か月間受け取ることができる
  • 退職後も条件を満たせば継続して受給可能

ただし、給与が一部でも支払われている場合は調整が入ります。また、自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険には、この制度がありません。

長期的な支援となる障害年金

病気やケガによって障害の状態になった場合、政府広報オンラインで紹介されているように、障害年金を受け取れる可能性があります。

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、初診日にどの年金に加入していたかで決まります。視覚障害や聴覚障害だけでなく、がんや糖尿病、心疾患、精神疾患なども対象となります。

等級 障害基礎年金(年額) 対象となる状態の目安
1級 約102万円 日常生活に著しい制限がある状態
2級 約82万円 日常生活に制限がある状態

障害厚生年金の場合は、これに加えて報酬比例部分が上乗せされます。なお、初診日から1年6か月を経過する必要があるため、すぐには受給できない点に注意が必要です。

公的保障だけでは足りない理由

公的な制度があるとはいえ、それだけで生活をまかなうのは現実的に厳しいケースが多いです。

収入減少のインパクト

傷病手当金は給与の約3分の2しか支給されないため、収入が3割以上減少します。一方で、社会保険料や住民税の支払いは続きますし、医療費も増加します。これまでと同じ生活水準を維持するのは難しいでしょう。

自営業者・フリーランスのリスク

自営業やフリーランスの方は傷病手当金がないため、働けなくなると即座に無収入になる可能性があります。障害年金を受給できるまでの期間、生活費をどう工面するかが大きな課題となります。

  • 有給休暇や休業補償がない
  • 事業の継続や再開に向けた費用も必要
  • 十分な貯蓄がなければ生活が立ち行かなくなる

民間保険による備え方

公的保障でカバーしきれない部分を補うため、民間の保険商品を活用する方法があります。

就業不能保険の活用

就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなったとき、毎月給付金を受け取れる保険です。医療保険が治療費をカバーするのに対し、就業不能保険は生活費の保障を目的としています。

項目 内容
給付金の受け取り方 毎月、給料のように受け取る
免責期間 60日~180日程度(商品により異なる)
保障期間 定期タイプが一般的

会社員の場合、傷病手当金がある期間は給付金を半額にするハーフタイプを選ぶと保険料を抑えられます。自営業者やフリーランスの方は、最初から満額受け取れるタイプが適しています。

医療保険との違い

医療保険と就業不能保険は目的が異なります。医療保険は入院や手術などの医療費をカバーし、就業不能保険は長期療養中の生活費を支えます。短期の入院であれば医療保険で対応できますが、長期間働けない場合は両方に加入しておくと安心です。

自分に合った備え方を選ぶポイント

まずは現在の貯蓄で何か月間生活できるかを計算してみましょう。最低でも生活費の6か月分、できれば1年分の貯蓄があると安心です。貯蓄が十分でない場合は、保険での備えを優先的に検討すべきです。

家族構成や支出を見直す

子どもの教育費、住宅ローン、親の介護費用など、固定的な支出が多い世帯ほど、収入減少時のリスクが高まります。必要な保障額は、こうした固定費を基準に設定するとよいでしょう。

働き方による違いを理解する

  • 会社員・公務員:傷病手当金があるため、補完的な保障を検討
  • 自営業・フリーランス:公的保障が薄いため、手厚い保障が必要
  • 主婦・主夫:家事労働の価値を考慮して保障額を設定

早めの準備が安心につながる

働けなくなるリスクは、死亡するリスクの数倍高いというデータもあります。「まだ若いから大丈夫」「自分は健康だから」と考えていても、突然の事故や病気は誰にでも起こりえます。

公的な制度を理解し、必要に応じて民間保険で備えることで、万が一のときも経済的な不安を軽減できます。大切なのは、自分や家族の状況に合わせて、過不足のない準備をしておくことです。今のうちから具体的な対策を考えておきましょう。