ライフイベント×お金|人生でかかる費用を読み解く

離婚時の生活費や養育費はどう確保する?押さえておきたい経済面の基礎知識

離婚を考える際、生活費や子どもの養育費をどう確保するかは、最も切実な問題のひとつです。感情的な問題だけでなく、離婚後の経済的な自立を見据えた準備が重要になります。

養育費の基本的な仕組みと相場

養育費は、離れて暮らす親が子どもの生活のために支払う費用です。離婚しても親子関係は続くため、法律で定められた義務となります。

養育費の金額はどう決まるか

養育費の金額は、裁判所が公表している養育費算定表を参考にするのが一般的です。この算定表では、両親の年収と子どもの人数・年齢をもとに、標準的な金額を確認できます。

算定表を使えば、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収を当てはめるだけで、おおよその目安がわかります。ただし、これはあくまで標準的な金額であり、双方の合意があれば異なる金額を設定することも可能です。

統計から見る養育費の実態

司法統計によると、実際に取り決められている養育費は月額2~4万円が最も多く、次いで4~6万円となっています。

月額養育費 割合
2~4万円 約30%
4~6万円 約25%
6~8万円 約13%

ただし、実際の金額は支払う側の年収や受け取る側の収入状況によって大きく変わります。子どもの年齢によっても異なり、15歳以上になると教育費の増加を考慮して高めに設定される傾向があります。

養育費を確実に受け取るための工夫

養育費の取り決めをしても、実際に支払いが続くとは限りません。未払いを防ぐための対策を講じておくことが大切です。

公正証書を作成する

養育費の金額や支払い方法を公正証書にまとめておくと、万が一支払いが滞った場合に強制執行の手続きが取りやすくなります。口約束や簡単な書面だけでは、後々トラブルになりがちです。

  • 支払い金額と支払日を明確に記載する
  • 支払い期間(子どもが成人するまでなど)を具体的に定める
  • 進学時の学費負担についても取り決める

状況変化に備える

取り決め時点では予測できなかった大きな事情の変化があれば、養育費の増額や減額を請求できる場合があります。子どもの病気や進学、収入の大幅な変動などが該当します。

ただし、単に「相場より安かった」という理由だけでは、後から増額を求めるのは難しいとされています。最初の取り決めの段階で、納得できる金額を設定することが重要です。

財産分与で離婚後の生活基盤を確保する

離婚時には養育費だけでなく、婚姻期間中に築いた財産を分け合う「財産分与」も重要な収入源になります。

財産分与の対象となるもの

婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は、名義がどちらであっても原則として分与の対象です。専業主婦であっても、家事や育児で家庭を支えた貢献が認められます。

分与の対象になる財産

  • 預貯金・現金
  • 不動産(マイホームなど)
  • 自動車
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 生命保険の解約返戻金
  • 退職金(離婚時に近い場合)

分与の対象にならない財産

結婚前から所有していた財産や、相続・贈与で得た財産は「特有財産」として分与の対象外です。独身時代の貯金や親から相続した不動産などが該当します。

財産分与の割合と手続き

財産分与の割合は、特別な事情がない限り2分の1ずつが原則です。離婚原因がどちらにあるかは、基本的に影響しません。

財産分与の請求期限

財産分与は離婚後でも請求できますが、期限は離婚時から2年以内とされています。この期限を過ぎると、家庭裁判所への申し立てができなくなります。

離婚を急ぐあまり財産分与の取り決めをせずに別れてしまうと、後から財産を把握するのが難しくなったり、相手が財産を使い込んでしまったりするリスクがあります。できるだけ離婚時に同時に取り決めることが望ましいでしょう。

財産分与の実際の金額

司法統計によると、財産分与の総額で最も多いのは100万円以下です。ただし、これはあくまで統計上の数字であり、婚姻期間が長ければ長いほど財産も増えるため、金額は家庭によって大きく異なります。

離婚後の生活設計で考えるべきこと

養育費と財産分与だけでは、離婚後の生活すべてをカバーできるわけではありません。自立した生活基盤を作るための準備も必要です。

収入を確保する方法を考える

専業主婦だった場合や、パートタイムでの勤務だった場合、離婚後はフルタイムでの就業を検討する必要があります。

就職準備のステップ

  • 資格取得やスキルアップの検討
  • ハローワークの職業訓練プログラムの活用
  • 子どもの保育環境の確保
  • 実家など周囲のサポート体制の確認

すぐに正社員として働くのが難しい場合でも、パートから始めて徐々に収入を増やしていく方法もあります。焦らず、自分のペースで経済的自立を目指すことが大切です。

公的支援制度を活用する

ひとり親家庭向けには、児童扶養手当や医療費助成など、さまざまな公的支援があります。お住まいの自治体の窓口で相談すれば、利用できる制度について案内してもらえます。

主な支援制度

制度名 内容
児童扶養手当 ひとり親家庭の生活安定と自立を支援する手当
ひとり親家庭医療費助成 医療費の自己負担分を助成
住宅手当 家賃の一部を補助(自治体により異なる)

将来を見据えた準備を始める

離婚は人生の大きな転機ですが、経済面での不安を減らせば、新しいスタートを切りやすくなります。養育費や財産分与といった当面の権利をしっかり確保しながら、自分自身の収入を得る道を探していくことが重要です。

話し合いが難しい場合や、適正な金額がわからない場合は、弁護士や法律相談窓口を利用するのも一つの方法です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、子どもと自分の将来のための準備を進めていきましょう。